【PS】moon 全般 2017年01月03日 独特すぎるキャラクターの造形と強すぎるメッセージ性、好き嫌いが極端に別れると思われる。 個人的には「そこまで好きじゃないけど一度はプレイしてみてほしい」という感じ。 誉め言葉は既にたくさんあると思うので、不満点を挙げる。 主人公が旅をするのはゲームの中の世界。 ゲームの中ではモンスター=アニマルは悪ではなく、それを倒して回っている勇者は単なる乱暴者だった、という位置づけ。 倒されたアニマルを生き返らせて、主人公はラブ=経験値を回収していく。 アンチRPGということだが、結局は他のゲームにおける敵と味方の名称を入れ替えただけなんですよね。 アニマルを生き返らせる主人公側が善で、罪なきアニマルを倒す勇者は悪。 勇者との戦闘こそないものの、彼の立ち位置はいわゆるところの“人類滅亡と世界征服を目論む魔王”と似たようなもの。 要するに悪役です。 まず誰も他者の生を阻害しない世界なんて不自然すぎて気持ち悪いと思うのですが。 アニマルのせいで迷惑を被っている人や、それらを狩って生活している人がいないところに違和感がある。 そもそも人間と見るや襲いかかってくる他のRPGのモンスターと、この世界におけるアニマルとは存在の定義がまったく違う。 “この世界では”モンスターは悪者じゃない、“だから”という理由づけがなければ勇者を悪にすることはできない。 このゲームの勇者(あるいは黒幕)を無理やり悪に貶めることで“よくあるRPGの勇者”に異を唱えるのはお門違いじゃないか? モンスター側に焦点をあてて、そちらにも正義があることを示すならまだしも。 全体的にアンチRPGやアンチ勇者が成立しているとは言い難い。 殺生があるからラブがないとは限らない。 殺生さえなければラブがあるわけでもない。 このゲームがぶつけている皮肉は非常に底が浅く、標的としているゲームを表面的にしか捉えていない。 王道RPG好きからすると少し的外れに思える部分も多かった。 私はこのゲームの勇者が好きで(黒幕も好き)おばあちゃんに悲しさを感じ、逆に主人公である少年には何も感じなかった。 少年がゲームの中で透明になっていること、エンディングの内容からすると、たぶん何も感じないのは正しいのだと思う。 このゲームの中で少年は何者でもなく、何者にもならない。 まさにそれこそがmoonの主題なのかもしれない。 でも、そんなものをゲームという媒体で出されてもね、というのがゲーム好きの本音ではある。 なぜだろう? キングオブキング王様の言う「ゲームとかばっかりしてないで お外で遊びなよ!」は感じがいいんですけど。 やっぱり自分の主張に毒を含ませて斜に構える姿勢はちょっと肌に合わないな。 自分の伝える能力が欠如してるのを「べつに分かってもらおうと思ってないから」と言い訳しているようにも見える。 まあ、シニカルなメッセージの含まれた物語が好きな人なら楽しめるでしょう。 ラブを集めてエンディングまで進めればなんらかのカタルシスは得られるのではないか。 好きとか面白いとかよりも【印象に残るゲーム】であることは間違いない。 ひねくれた物の見方をする人はダメです。私ですが。 「深いっぽいことを散りばめて雰囲気を出してるけど実は浅いんだな」と思ってしまったら終わりです。 で、このゲームをプレイするときは攻略本が必須です。 丁寧に住民のスケジュールをチェックしてストーキングすれば自力で回収することも不可能ではないが、イベント同士の繋がりも複雑で把握しにくい。 アニマルのラブ回収は非常に分かりにくくて面倒くさい。 移動の不便さも相俟って、ある程度は攻略本で効率化しないとストレスが溜まります。 ゲームとしてのユーザビリディは皆無です。 ネタバレとかは気にせず、適宜攻略を見てなるべく快適に進めましょう。 ジンギスカンと釣り。 この二つは最悪、諦めてもいいと思う。 私の場合「二周目はいいや」と思わせた唯一にして最大の要素が釣りコンテストでした。 まず魚自体が針にかからない。 かかりさえすれば釣り上げるのは簡単なのに、かからない。 キリキリソテーを食べるとか月魚をBGMにするとか、謎のジンクスにも縋ったけどダメでした。 ジンギスカンは頑張ればなんとかならなくもないので釣りよりマシです。 いろいろ言いましたが、不満点を補って余りある魅力があるのもまた事実。 クレイアートのような独特のデザインで世界を動き回るキャラクターたちはみんな人間味に溢れており、彼らの生活を観察するのはとても楽しい。 バラエティーに富んだ音楽、それをMDにして好きなようにBGMを編集できるというシステムも面白い。 好きな人しかレビューしないので無闇に持ち上げられすぎているきらいはありますが、ちょっと変わった世界観を味わいたい人にはおすすめできます。 ブログ投票→ [0回]PR